ドイツに住むその日まで、実は私は一度もドイツを訪れたことが無かった。
つまり、行ったことの無い未知の外国に、いきなり住んじゃったのである。
私が使ったのは、「ワーキングホリデービザ」というビザだった。
ご存知の方もおられるだろうが、それはそれはもう、本当に何でも出来ちゃうとても便利なビザで、留学OK、就職OK、旅行OK、何もしなくてもOK、期間中日本に何度帰国してもOK、、、勉強だってアートな活動だってなんだって出来ちゃうという、魔法のビザであった。
もしもワーキングホリデービザを使って外国に行くか迷っている方がいたら、私は100%行く方に賛成する。貴方の背中を全力で押したい。痛っ!てなるくらい押したい。こんなに便利でお得なビザを、使わない手はない。言葉では言い尽くせないほどの素敵過ぎる経験が貴方を待っているから。
私の第一希望の国、つまり移住先候補NO.1の国は、実はドイツではなく、私が愛して止まない国イギリスだった。
イギリスのワーキングホリデービザは、他の国に比べて少し取得が難しい。移住先として大人気なイギリスは、このビザで1年間に1000人という人数枠が有り、審査や試験などが有るのでは無く(合ったら良かったのだが)、それはなんと希望者をコンピューターがランダムにふるい落とすという非常に過酷なものだった。
殆ど" 宝くじ "である。
実は私は、宝塚現役中に二度、この" イギリスワーホリ宝くじ "にトライしている。もしも運良くビザがゲットできたら、そのときはきっとそれが自分の運命、ぱっと宝塚を辞めてそのままイギリスに行こう、と本気で考えていた。
が、しかし。そうならなかった。
私はその" イギリスワーホリ宝くじ "に落ち続けた。そのおかげで、私はめでたく研11まで宝塚歌劇団に身を捧げることが出来たのである(笑)!
そしてとうとう、ワーホリにトライできるラストの年(※ワーキングホリデービザには年齢制限有り)が来てしまった。
" イギリスワーホリ宝くじ "にはもう既に二度落ちていたが、あともう一度チャンスが残っていた。しかし私は同時に「もしかしたらイギリスじゃないのかもな〜」ともうっすら考え始めていた。
よし、他の国も視野に入れてみるか、、、
はてさて、何処の国がいいだろう?
そんなことを考えていた時だった。
ピロリン、と私の携帯が鳴り、小学校の同窓会のお知らせが届いた。
おお、誰かが企画してくれたのか、懐かしいわねとメッセージを拝読する。
そこには同窓会のグループLINEが結成され、参加非参加の回答をする仕組みになっていた。
私は、当時住んでいた宝塚のマンションのベッドの上で、懐かしい同級生達が交わすやりとりを、非常に寛ぎながら眺めていた。すると、ある1人の同級生のメッセージに目が留まった。
それは、
「俺、今ドイツ住んでるから参加できひんわ〜楽しんで〜」
というものだった。
え!そんな人がいたとは。誰だろう一体。私はそのメッセージの送り主を凝視した。
彼の名はのっちゃん。
のっちゃんと私は、小学校から、近くの公立中学へ上がったが、中学卒業以来、十何年も連絡を取っていない。それまで連絡先も知らなかったし、のっちゃんには本当に申し訳ないが、存在すらも滅多に思い出すことは無かった(のっちゃんごめん)。
気付けば私は、のっちゃんに電話していた。(めいわく〜)
LINE電話だから、国際電話も無料である。嗚呼、二十一世紀万歳。
「もしもし久しぶり、小中学校で一緒だった松尾(本名旧姓)ですが今ドイツに住んでるって本当?」と、超久し振りにも関わらずいきなりの質問。
「そうだよ〜」と緩く答えるのっちゃんは、どうやらあちらで結婚し、一児のパパになっているらしい。
そして私はなんと二言目に、
「ねえ、、例えばもしも私がドイツに住んだら、住民登録やその他諸々、手伝ってくれたりする?」と聞いたのだった(我ながら本当に図々しい)。
そんな図々しすぎる私の質問に、なんとのっちゃんは「いいよ〜」とまたまた緩く答えてくれたのだった。
(※注 : 因みにのっちゃんとは、学生時代これといって特に仲良しなわけではなかった。いわゆるただの同級生。
しかし後程聞いた話なのだが、、小学校時代、私は休み時間になると隣のクラスののっちゃんを誘い、" どっちがゴリラの物真似をリアルにできるかごっこ "を挑んでいたらしい(なぜ!)。
特に審査員が居る訳でもなく、ジャッジは自分達に任せられていて、私はよく「今日はのっちゃんの勝ちだね!」などと言い放ち、少しさみしそうな様子で自分の教室に帰って行ったそうだ。全く覚えていない。本当にクレイジー。)
写真:ゴリラ(本物)
十何年ぶりに話す同級生との電話を切った私は、
「行ったことの無い国に突然住むっていうのも、もしかして超面白いかも、、」
と、密かに思い始めていた。
そして、イギリスのワーホリ当選発表日。
結果は落選。
勿論、落胆しなかったわけではない。
ずっと、イギリスにいつか住んでみたいわと思っていたから、落選のメールを受け取ったときはかなり落ち込んだ。
向こうに居る友人達も、「受かるといいね、待ってるね!」と言ってくれていたので、彼らにも落選の報告メールをしておいた。
そしてのっちゃんに
「ドイツに住む可能性が高くなってきました。そのときはどうかよろしく」とだけ、メッセージを送っておいた。
ずっとずっと、住みたいと憧れていたイギリス。ワーホリ最後のチャンスに落選して沸く悲しい気持ち。が、それと同時に、どこか爽やかな風が私の心に吹き始めていた。そして心のどこかでわくわくし始めていた。
「ドイツって住みやすいのかしら」
私は、未知の国ドイツについて、早速調査を開始したのであった。
〜続く〜
🇬🇧 🇩🇪 🇬🇧 🇩🇪 🇬🇧 🇩🇪 🇬🇧
Comments